『そんな悲しいこと言わないでよ』 そう私が言うのを予想していたのか、私が口を開きかけた瞬間それを遮るように彼は続けた。 「でも」 「……でも、俺とみかみは話すことができる。感情を共感することができる。この魚よりずっと遠くて、でもずっと近いよ」 ヨクと出会ったばかりにこの言葉を聞いていたらきっと混乱していただろう、けれど、今の私には深く深く伝わった。 「———そうだね、ずっと近い、近いよ」 私は、私の手から離れていく魚を惜しいと思わなかった。