「…ううん、大丈夫だよ、忙しいのに来られる方が不思議だもん。うん、うん………そうだね…はい。じゃあまた今度ね…おやすみなさい」 受話器を置く手が震える。 悲しんでいる背中をヨクに悟られないように、元気に振り返った。 「お父さん、急用で帰ってこられなくなっちゃったって!ケーキ屋さんにキャンセルの電話しなくちゃね!」 ヨクに余計な心配をさせまい、と明るく振舞った。 「みかみ……」 何か言いた気なヨクをわざと見えないようなふりをして電話番号を入力した。