「あっ、もう11時半!お昼作りださなくっちゃ……みぃちゃん、パスタは嫌いじゃない?」
藤堂くんの部屋の時計を見てゆりは言った。
「へっ?!お昼?!」
「みぃちゃんもちろんお昼食べてくよね?」
全く予想していなかった展開に答えるのに戸惑う。
確かに、昼食どうするかとか何時まで藤堂くんちにいるかとか考えてなかった……!
「じ、じゃあお言葉に甘えて……」
私は遠慮がちにぺこりとした。
「そのかわり私も一緒にパスタ作るよ」
私がゆりの後に続いて部屋を出ようとすると、
「いいのいいの♪みぃちゃんはお客様なんだから♪若いお二人は部屋でごゆっくり~♪」
とゆりが言ってドアを閉められてしまった。
「おい若いお二人ってお前も若いだろ!」
後ろからの藤堂くんの投げ掛けにも応じずゆりは軽やかなステップで鼻歌と共に階段を降っていった。
「や、やっぱり悪いし私も手伝いに行くね!」
私が気を遣ってドアノブに手を伸ばすと、ベッドに座っていた藤堂くんが口を開いた。
「――――行くな」
半開きの窓からの風で、カーテンが揺れた。


