花はあたしを忘れて走って行った。
先生に喧嘩を売りに行ったんだろう。
あたしは行きたくなかった。
先生の元へ。
あたしは生徒席でお茶を飲み、行われようとしている二年生の学年種目をぼーっとただ見つめていた。
種目が始まっても帰ってこなかったから、辺りを見回してみたけど姿はなかった。
種目が終わろうとしていたとき。
「よっ」
あたしは、あたしに言っているとは気付かず、振り返らなかった。
「薪下さ〜ん」
「はい!?」
振り向いたら、平瀬くんの顔。
なんで1人なんだろう?
「なんで1人?佐山は?」
先生の所へ行った、とは言えるはずもなく。
「ちょっと、用事だよ」
平瀬くんは、ふーんって言いながらあたしの横に座った。
この瞬間に、さっきの花の言葉が一瞬にして蘇った。
“平瀬くんは宮本先生の代わりじゃない”

