その瞬間。
かなちゃんはあたしの方を一瞬見た後、先生を横から見つめた。
先生はため息をついて、ゆっくり体ごとこっちに向けた。
「なぁ、朋。俺は三國先生の事も、朋の事も好きじゃない。今は忙しいし好きな人も彼女もいないよ。教師やってるだけで今は精一杯なんだよ。」
…“朋の事、好きじゃない。”
そんなことはかなり前から知ってた。
やけど、口にされるだけでこんなに辛いのはなぜ?
それは多分、あたしの心のどこかで期待してたから。
まず口を開いたのは、かなちゃん。
「好きじゃないって、朋ちゃんは生徒だよ?!」
「生徒としては好きに決まってんだろ」
…。
がーんって音が鳴ったような気がした。
それからかなちゃんと先生の言い合いが遠くに聞こえて…。
―――――それからあたしの頭は何かに打たれたように思考停止した。

