先生の唇は乾ききっていて、色も明らかにおかしい。
目は開いていない。
閉じてる。
瞼の裏に映る田浪先生を見てるのかな・・・
「最後まで聞いてくれ。ただの俺の思い出話をするのとは、全くわけが違うんだ・・・。卒業式の日。俺は無事高校受験が終わってホッとしてた。正直、バスケで受かったから、勉強はあんまりしてなかったな・・・。」
ここで先生が、少し笑った。
カラカラに乾いた笑顔が痛々しい。
「百合と別れてから、進級してクラス替えもあったし、色んな行事があったけど、俺は百合を見なかった。姿を見るとまた追いかけてしまいそうで。」
最後に話した一言は・・・何だったんだろう。
そう思うと、先生はそのことについて話し出した。
「俺と百合が卒業式の最後に交わした言葉、何だと思う?」
何だろ・・・
卒業式なんだから
「おめでとう、とか?」
先生は首を横に振る。
相変わらず、瞳は閉じたまま。