校長がメガネを光らした。
「はい・・・。」
百合の声は震えていた。
ホッとした。
一気に強ばっていた力が抜けてゆく。
変に俺をかばおうとしなくて良かったよ・・・。
これで噂は無くなるだろう。
「バレンタインデーに、俺が田浪センセに好きって言ったんです。だけど田浪先生は、俺の事は好きじゃないよって、きっちり振ってくれました。でもその場面を誰かに見られたのかな・・・。」
俺は嘘を並べた。
昔から嘘をつくのがうまかった俺は、困ったときに誤魔化すのが得意だった。
「そうですか・・・。教師を好きになるなとは言いません。教師だといっても一人の人間ですからね。しかし、気持ちを伝えてはいけないと思います。今回は単なる噂ということが証明されましたが、これからは気をつけてくださいね?田浪先生も。」
校長が冷静な人で良かった。
「すいません」
「以後気をつけます」
それから俺たちは一緒に廊下に出た。

