早速照れくさそうにもらっていた。
「陽助!」
陽助はもうもらったか?
「おー待って!今から咲子(さきこ)んとこ行って来る!」
咲子とは、深代のこと。
陽助の決戦は今からか。
頑張れ、陽助。
俺は陽助の背中を見送っていた。
そこへ、佐々岡が走って来た。
「宮本くんっ」
ドキ、ドキ
俺は優しく頷き、佐々岡の後ろをついて行った。
佐々岡は黙ったまま、中庭に俺を連れて行った。
「あの、これ。言ってたアップルパイ。口に合わないかもしれない……でも、食べて?」
アップルパイが入っているだろう箱を持つ佐々岡の手は震えていた。
もらってくれるかな、口に合うかな、食べてくれるかな。
そんな佐々岡の不安や気持ちがイヤなほど伝わった。

