庭木の手入れをしている金田を見つけ出し渡辺は、その後ろ姿に向かい「おはよう」と声をかけた。

この屋敷にいる者たちの中で一番大きなその体は、おそらく一番頑丈であろうと思われた。

共に暮らすようになって10年以上。
この男が体調を崩して休んでいる姿など、見たことがなかった。
丈夫が売りの渡辺ですら、風邪くらいは引くことが何度かあったが、金田が風邪を引いている姿など見た記憶がなかった。

「風間から、探していたと聞いたが?」
「ああ。おはようさん。あのな。今朝、屋敷を出たとこのあの店で、珈琲飲んできたんだけどな。ちょっと気になる話を耳にしてな」
「気になる話?」

眉間に縦皺を刻んだ顔で、渡辺は言葉の先を促した。

「客の一人がな、二日、三日前、このあたりでは見かけたことのない男から、街中でこの屋敷のことをあれこれ尋ねられたと、マスターに話していたな」
「この屋敷のことを?」
「ああ。どんなヤツが住んでいるのかとか。屋敷の者が外に出てくるときはあるのかとか。そんなことを、あれこれと聞かれたらしい」

ちょっと気になってな。
顔を顰めている金田に、確かに気になる話しだと、渡辺も渋い顔で頷いた。