人攫いにあっとしても、あのような山奥に捨てられているのはあまりにもおかしい。
都に出てそれとなく人に尋ねてみたこともあったが、そのような赤子が人攫いにあって行方知れずになっているという話しは聞かなかった。
一体、どうして朱花は山に捨てられていてのか、それが青嵐にはずっと謎だった。
センの低い声が、その疑問に答えた。

「誰と言うなら、親だな」

ふんと鼻を鳴らしてそう告げる、センの頬に浮かんだ陰のある笑みに、青嵐の表情も険しくなった。

「何故」
「朱い爪の赤子だったから、忌み嫌ったのさ」

それだけのことで、あの優しい子を捨てたと言うのかっ
センのその言葉に、青嵐から、ざわりと立ち上る青白い怒気の炎に、俺に怒るなよとセンは笑った。

「そうらしいとしか、俺は言えないんだけどさ。爺さんが言うには、そういうことらしい」

まあ、爺さんも見ていたわけじゃないけどな。でも、案外、爺さんの言葉は当たるんだよ。
肩を竦めながら続けるその言葉には、やりきれなさが込められているようだった。

「朱い爪を不吉だと言って、殺せと家臣に命じたが、命じれた家臣も、生まれたばかりの愛くるしい赤子を手にかけるのは忍びなかった。ならばと、殺したと報告して山奥に捨てた。見ていたわけじゃないけど、爺さんがそう言うんだから、多分、そうなのだろうと思うぜ」

それが山に捨てられいていた理由だよと言ったセンは、そこで一息つくように、茶を飲んだ。