カズ君は博士に深く礼をするともう一度僕に「行こ」と言った。

帰りはタクシーに乗った。カズ君のおごりで。

タクシーの中でカズ君は何も喋らず、凄く苦しそうな顔をしていた。

なんか変な感じだ。みんなそれぞれの立場で苦しんでいる。

僕だって苦しい。

リョウちゃんがいなくなってしまう。お父さんがいなくなってしまったみたいに。

リョウちゃんだって多分苦しい。

でもリョウちゃんは自分の苦しいより前に僕の為に苦しんでる。

カズ君だって、博士だってみんな誰かの為に苦しんでる。

分け合うんだって思った。しまい込むんじゃなくて。

そう考えたら背筋がスッと伸びる気がした。

とりあえず今出来る事をしよう。誰かの為だし、自分の為に。

そう考えたら少し怖くもあった。