博士がこっちを見ている。私はベットの中にいた。

「おはよう」ズキズキする頭をぐるりと動かし時計を探した。

時間を見ると多少予定より早い。それともこれは1日あとなのか?博士に尋ねると日付は変わらず今日だと教えられた。

「早くない?」と尋ねると博士は黙って下を向いてしまった。

こういう態度は医者として失格じゃないか?

博士は私という患者に表情ひとつで状況を伝えてしまっている。

「時間。早くない?」

博士は目を閉じたまま顔を上げた。顔を上げ大きく息をひとつついた。

「状況を。説明します」いまさらながら落ち着いた声で博士は説明を始めた。

ダメだったこと。それだけが体中の隅々まで染み渡っていく。

 思った以上に進行が早かったこと。すでに何箇所に転移していたこと。ひとつひとつ対処していたのではそれだけで命に支障をきたすこと。

私は、ガンだったのだ。そのことをいまさらながらくっきりと頭の中に焼き付ける。

私はガンだったのだ。