「あれ、何ですか。 女性に渡したの……」 手どころか、声も震えていた。 「毒入りシャンパン」 彼は、あっさり言った。 そのとたん、全身が震え出した。 あのおじさん、イヤ女性たちもだろう。 今日は、この暗く寂しいところで夜を明かすんだ。 そして、明日にはもう冷たくなっているんだろう。 でも、震えている理由は、それだけじゃないんだ。 気付いたんだ。 私の頭の奥底に閉まわれた記憶が飛び出す。 喜びにも似た感情も、溢れていた。