「……気持ちいい・・・」


光の溢れる昼下がり、私達はバスケットを持って丘に来ていた。


「……久しぶりだね」


彼のプロポーズを受けてから、お互い(主に私が)退職届や籍入れに忙しくこの丘に来ることはなくなっていた。


「ほんと……久しぶり」


言葉を切り、胸いっぱいに空気を吸い込む。


「・・・ねぇ、あの木陰まで競争しない? 」


彼は子どもっぽく言うと、私を置いて駆け出してしまった。


「あ、ちょ、待ってよーっ!! 」


置いて行かれた私は嘆息し、ゆっくり彼を追い掛けた。