春橋さくらは優しくて正義感の強い、まる少年漫画のヒーローのような女の子だった。

いや、女の子だから、少女マンガのヒロインかな?どちらにせよ、彼女にはどこか、惹きつけられるような魅力があった。あたしには到底持ち合わせていない、魅力。
 
それは入学式のときの出来事だった。春のあたたかい日差しに眠気を誘われ、うとうとと夢うつつに入学式を出席していたあたしの肩を、後ろからつんつんと叩く女の子がいた。

なによ、と若干強気に返すと、その子は少し戸惑ったようにしながらも、愛らしくはにかんで、「起きなきゃ、怒られちゃうよ」と言った。