水色べんとう

「でも、妹にならなくて、ほんとうによかった」

「……え?」

「さくらちゃん」
 
ちりん。風鈴の音。

「好き」

「え……え?」

「付き合おうか、ぼくたち」
 
なんて、どうかな、と言って、恥ずかしそうに笑う相上さん。少し不安そうにこちらを覗いている瞳が、妙に愛しく思えた。

「あ……相上さん」

「なに……ってうわ!?なんで泣いてるの、さくらちゃん!?だ、大丈夫!?」

「わたし……初めて会ったときから、ずっと、相上さんのこと―――
 ――――――――――――好きでした」
 
それ以上は、言わなくても伝わった。感謝の言葉とか、思いとか。
 
ただ、私は、夏の暑い日差しと、涼しげな風鈴の音と、相上さんの笑顔に包まれて、たくさん泣いた。

お母さんができなかったことを、私ができたんだと思うと、嬉しいような、くすぐったいような、変な気持になった。