水色べんとう

小さい頃から男の子が苦手だった。

男の子は乱暴で、すぐに暴力を振るうから、怖かった。

なんでもかんでもすぐに物は壊すし、自分勝手だし、意地っ張りだし。地球上には女の子だけが住めばいいと思った。
 
そんな私の狭い世界を突き破ってくれたのは、相上さんだった。
 
当時私は彼のことを「お兄ちゃん」と呼んでいた。そう呼ぶと、お母さんが嬉しそうな顔をしていたからだ。お兄ちゃん、お兄ちゃん、と、私は繰り返し呼んでいた。
 
どうして気付かなかったのだろう。あの優しいお兄ちゃんは、相上さんだったということに……いや、無理もない。

だって、出会った当時の相上さんは、京都弁を使って喋っていたのだから。あれだけ特徴的な喋り方をしていた人が、普通の喋りにかわっていたのだ。気づかなくて当然ともいえよう。