水色べんとう

「私は、なんて馬鹿なことをしてんだろう。目の前にある幸せは、こんなに、優しくて、暖かったのに……抱きしめれば、抱き返してくれたのに」

「お母さん……お母さん」

「それから、私は……旅に出た。新しい自分に、生まれ変わりたくて」

涙をぬぐって話すお母さん。
「さくらやしほに会いたかった。でも、我慢した。いつも家族の写真を持ち歩いて、辛いことがあったときは、それを見て元気を出した。そして、私は、今日……」
 
薄く笑う。あの日と同じ、儚い笑みだった。