水色べんとう

「私はね、理不尽にも、息子さんが憎かった。ええ、本当、最低だと思うわよ、自分でも。だけどね、そんな最低なことを考えちゃうくらい、私はミツルさんのことが好きだったの。いつまでも末長く、一緒に暮らして、笑顔が溢れるような家庭を築きたかった。でも、それも台無しになった。―――そんなときにね」
　
お母さんは私の頭を不意に撫でた。私は、ぼろぼろと涙をこぼしていた。

「さくらが、言ったのよ。好きな男の子ができたの、って」
　
ふふ、とお母さんは優しく笑う。

「だいだい予想はついたわ。さくらの思い人は、私が思った通り　
　　―――――双太君だった」

「お、おかあさ……」

「私はね、そのとき、双太君にすごくやきもちを妬いた。当時まだ中学生だった彼を、憎いと思った。なんだか、私の大切な人、すべてもっていかれちゃった気分になった」
　
お母さんはレースのはんかちで私の涙をぬぐってくれた。優しい匂いがした。