「でも、ミツルさんは、私との結婚を拒否した。理由は、私の家庭を壊したくない、と……いいえ、でも、そんなのきっと、違ったわ。そうじゃなくて、彼は、息子さんのことを心配していたの。十歳になるまで伯父さまのところに預けて離れ離れにしていたらしくて、やっと親子三人で暮らし始めた途端に、奥様が亡くなったそうだから……私と再婚して息子さんとの関係がぎくしゃくになるのを、彼は恐れていたんだわ」
お母さんは、優しい顔をしていた。私が大好きだった、あの顔だ。
お母さんは、優しい顔をしていた。私が大好きだった、あの顔だ。
