水色べんとう

「お母さんはね、やきもちを妬いて、逃げ出しちゃったの」

「……え?」

「うふふ。くだらない話でしょう?」
 
夏風に揺れるお母さんの髪からは、うちのものではないシャンプーのにおいがした。

「お母さん、お父さんの他に好きな人ができてた」

懺悔するようでもなく、ただそれが当たり前のようにあまりにも普通にそう言うものだから、私は唖然とすることを忘れて「それで?」と話をせかしていた。