水色べんとう

「さくら」
 
その日の授業は午前中で終わった。というのも、終業式だけで、授業と呼べる授業はなかったのだ。

「さくら、久しぶり」
 
その女性は涼しげで大人っぽい白のワンピースを着ていた。年齢は四十代前半くらい。少し垂れ目な瞳と柔らかな笑みが、優しい雰囲気をかもしだしている。

「お……お……」

「なによ、そんな鳩が豆鉄砲喰らったような顔しちゃって」

「お母さん!」

私は一度叫んで、

「お母さん!」

二度叫んだ。