その事件はある夏の暑い日に起こった。
 
いや、事件というほど大きな出来事でもないが、その日の私はいつもの通り、コンビニで買ったおにぎりを二つ、ビニール袋に下げて歩いていた。時刻は朝の八時と少し過ぎ。夏用の学生服に身を包んで、じりじりと照りあげるアスファルトの上をうだるようにして進んでいた。

「さくらは本当に小食だねえ。そんなんじゃ倒れちゃうよ?」
 
というのは、パンを頬張りながら眠そうに口を開いた、今朝の姉の台詞だ。

確かに、お昼ごはんにおにぎり二つ、というのは、少ない方かもしれない。だけど、周りで他の子が、色とりどりのおかずをつまみながら白いご飯を食べるのを見ていると、なんだかあまり食欲が湧かないのだ。