再び真帆の心は『入りたくない』へ傾いた。
「よし、やめ!」
突然、男性の声がした。真帆や美咲だけでなく、先に見学に来ていた一年生約十人もピクリ、と体を震わせた。
矢を射っていた集団の真ん中にいた、背の高い男子が一年生の前にやって来た。彼は弓道衣の礼儀正しさに爽やかさを加えた、頼りがいのありそうな雰囲気を醸し出していた。
「部長の前島健人です。三年生です。今日はわが弓道部を見学に来てくれてありがとうございます」
前島はペコリと頭を下げた。髪がサラサラと揺れ、無防備で律儀な渦巻きが踊る。一年生はクスリと笑った。
「わが部は日々の鍛錬が成果を上げ、ここ数年全国大会で好成績を残しています。ですが、基本楽しく仲良くやっています。本当です、嘘じゃありません」
「部長、かたいっすよ!」
座った部員がアハハと笑った。前島は『まいったなぁ』と頭をかいた。
「初心者の方、大歓迎です。僕は今部長をやらせてもらっていますが、弓道は高校に入ってから始めました。それでもこうして結果を残せているので、みなさんでも大丈夫です。男性女性問いません。興味のある方、ぜひ入部して下さい」
続いて、前島の二人左隣にいる男子部員が胸に手をあてしゃべりだした。
「本当にできるかどうか不安ですかぁ?ダーイジョウブ!僕が手取り足取り、やさーしく教えます。腕の上達は保障します。あ、ちなみに、そこの初々しい御嬢さん、彼氏いる?」
彼は右手を揃え、美咲を指した。美咲は肩をすくめ可愛く笑った。
「いません!」
いる、のに、いない、と嘘を付き、上玉の男に乗り換えようとする彼女の鉄板作戦に、真帆は作り笑いで腹ただしさを隠した。前島は男子部員を冷たい目で見ると、右手の拳を口にあてオホン、と咳払いした。
「残念ながら、我が部は部内恋愛禁止です。イチャイチャしているカップルを見て、嫉妬に燃えたり、はたまたフラれて落ちこんだりすると、戦意を喪失するからです。やってみなければわからない?いやいや、一年前までオッケーだった時に、さんざんデータは採取しました。廃人と化した先輩を見るのは、それはそれは胸が痛み、時に心踊りました。みなさんもゲスい奴らを楽しませないために、どうかこのシステムをご理解下さい」
「よし、やめ!」
突然、男性の声がした。真帆や美咲だけでなく、先に見学に来ていた一年生約十人もピクリ、と体を震わせた。
矢を射っていた集団の真ん中にいた、背の高い男子が一年生の前にやって来た。彼は弓道衣の礼儀正しさに爽やかさを加えた、頼りがいのありそうな雰囲気を醸し出していた。
「部長の前島健人です。三年生です。今日はわが弓道部を見学に来てくれてありがとうございます」
前島はペコリと頭を下げた。髪がサラサラと揺れ、無防備で律儀な渦巻きが踊る。一年生はクスリと笑った。
「わが部は日々の鍛錬が成果を上げ、ここ数年全国大会で好成績を残しています。ですが、基本楽しく仲良くやっています。本当です、嘘じゃありません」
「部長、かたいっすよ!」
座った部員がアハハと笑った。前島は『まいったなぁ』と頭をかいた。
「初心者の方、大歓迎です。僕は今部長をやらせてもらっていますが、弓道は高校に入ってから始めました。それでもこうして結果を残せているので、みなさんでも大丈夫です。男性女性問いません。興味のある方、ぜひ入部して下さい」
続いて、前島の二人左隣にいる男子部員が胸に手をあてしゃべりだした。
「本当にできるかどうか不安ですかぁ?ダーイジョウブ!僕が手取り足取り、やさーしく教えます。腕の上達は保障します。あ、ちなみに、そこの初々しい御嬢さん、彼氏いる?」
彼は右手を揃え、美咲を指した。美咲は肩をすくめ可愛く笑った。
「いません!」
いる、のに、いない、と嘘を付き、上玉の男に乗り換えようとする彼女の鉄板作戦に、真帆は作り笑いで腹ただしさを隠した。前島は男子部員を冷たい目で見ると、右手の拳を口にあてオホン、と咳払いした。
「残念ながら、我が部は部内恋愛禁止です。イチャイチャしているカップルを見て、嫉妬に燃えたり、はたまたフラれて落ちこんだりすると、戦意を喪失するからです。やってみなければわからない?いやいや、一年前までオッケーだった時に、さんざんデータは採取しました。廃人と化した先輩を見るのは、それはそれは胸が痛み、時に心踊りました。みなさんもゲスい奴らを楽しませないために、どうかこのシステムをご理解下さい」

