「バカにされたりしないかなぁ。あたし、あんまり運動神経よくないから」
「中学の時、三年間卓球部だったんでしょ。華々しい成績は残せなかったにしろ、やり抜いたんだから、思っているよりひどくないって」
「けどぉ」
「ま、とにかく行ってみよう。先輩みんな良い人で、親切丁寧に教えてくれるかもしれないし」
真帆は決めきれず、弁当袋についている紐を指に絡ませ、こね回した。
「よし、決まり!今日、掃除当番じゃないよね?ホームルーム終わったらすぐ行くよ!」
反対弁論をしようと息を吸い込み顔をあげると、美咲は話しかけてきた男子生徒と楽しげに会話し、分け入る隙はなかった。諦めた真帆は乗らない気分のまま弁当箱を開け、ハンバーグにかじりついた。ハンバーグまで落ち込んでいるように見えた。反対に、男子生徒を見送った美咲はご満悦で焼きそばパンにかじりついた。パンに挟まった焼きそばが心なしか踊っているように見えた。
無事予定の授業を消化すると、教室に鞄を置いて弓道場へ向かった。弓道場は屋外にあるため、一度外へ出なければならない。正面玄関にある下駄箱の前で、真帆は失恋した人のように、美咲は愛しい恋人に会いに行くよう上履きをしまい外靴に履き替えると、外に出た。貴族と下僕のごとく前後にならべば、足早に歩き出した。
正面玄関から右側へ五十メートル離れたところに弓道場はあった。白い壁で長方形の箱型の建物は、わりと新しい。その壁を覆うよう、二メートルほどの高さがあり、俵型にした藁の先端に的をつけた物がいくつも並べて置かれていた。
(これ、練習に使うのかな?)
美咲に連れられイヤイヤ来た真帆だったが、物珍しさにうっすらと弓道へ興味を抱いた。
入り口から入ろうとすると、五、六人の女子生徒がいた。各々プレゼントと思われる包装をしたものや、携帯電話を持ち何やら話していた。耳を澄ますと、『ユアサさん、ちょっとぐらい中抜けできないのかな』、『今日こそユアサ先輩にプレゼントもらってもらいたい』と言っていた。
(『ユアサ』って人、人気あるんだ。もしかしてイケメンの先輩かな。えー、なんか楽しくなってきたっ)
現在認知している同学年の男子生徒は、全員十人並みの容姿ばかり。イケメンが好きな真帆は、明るい未来の到来予告に胸が踊った。
「中学の時、三年間卓球部だったんでしょ。華々しい成績は残せなかったにしろ、やり抜いたんだから、思っているよりひどくないって」
「けどぉ」
「ま、とにかく行ってみよう。先輩みんな良い人で、親切丁寧に教えてくれるかもしれないし」
真帆は決めきれず、弁当袋についている紐を指に絡ませ、こね回した。
「よし、決まり!今日、掃除当番じゃないよね?ホームルーム終わったらすぐ行くよ!」
反対弁論をしようと息を吸い込み顔をあげると、美咲は話しかけてきた男子生徒と楽しげに会話し、分け入る隙はなかった。諦めた真帆は乗らない気分のまま弁当箱を開け、ハンバーグにかじりついた。ハンバーグまで落ち込んでいるように見えた。反対に、男子生徒を見送った美咲はご満悦で焼きそばパンにかじりついた。パンに挟まった焼きそばが心なしか踊っているように見えた。
無事予定の授業を消化すると、教室に鞄を置いて弓道場へ向かった。弓道場は屋外にあるため、一度外へ出なければならない。正面玄関にある下駄箱の前で、真帆は失恋した人のように、美咲は愛しい恋人に会いに行くよう上履きをしまい外靴に履き替えると、外に出た。貴族と下僕のごとく前後にならべば、足早に歩き出した。
正面玄関から右側へ五十メートル離れたところに弓道場はあった。白い壁で長方形の箱型の建物は、わりと新しい。その壁を覆うよう、二メートルほどの高さがあり、俵型にした藁の先端に的をつけた物がいくつも並べて置かれていた。
(これ、練習に使うのかな?)
美咲に連れられイヤイヤ来た真帆だったが、物珍しさにうっすらと弓道へ興味を抱いた。
入り口から入ろうとすると、五、六人の女子生徒がいた。各々プレゼントと思われる包装をしたものや、携帯電話を持ち何やら話していた。耳を澄ますと、『ユアサさん、ちょっとぐらい中抜けできないのかな』、『今日こそユアサ先輩にプレゼントもらってもらいたい』と言っていた。
(『ユアサ』って人、人気あるんだ。もしかしてイケメンの先輩かな。えー、なんか楽しくなってきたっ)
現在認知している同学年の男子生徒は、全員十人並みの容姿ばかり。イケメンが好きな真帆は、明るい未来の到来予告に胸が踊った。

