ジレンマだ。
伝えたい、でも伝えて今の関係を壊したくない。

「まぁ、決めるのは守だ。俺たちに干渉する権限はないよ。」
「健三、冷た!」
「…ただ、言わないで伝わると思うなよ。唯でさえ言葉でも伝えるの難しいんだからな。」
健三の言葉が心にのしかかる。
そんな言葉に俺の心は耐えきれなかった。
そんな自分に嫌気がさした。
もう…嫌だ。

片付けを終え、ウッドハウスへ向かう。
「晴彦、健三。」
「あっ?」
「決めたわ。言う、伝える。」
正直、自分でなにいっているか分からなかった。
でも、これだけははっきりさせた。

伝える、今夜。

「いきなりだな。」
「まっ、俺たちは応援してるけどな。」
二人とも快く分かってくれた。
それだけでも、俺には心強かった。

「ねぇー!」
意を決した時、ウッドハウスから声がした。
優香だった。
「今夜、流星群が来るんだって!」
優香の言おうとしていることは分かる。

「今夜、星見に行こう!」

夏の夕暮れ。
暖かい風が足元をかける。
その風は再び、俺の鼓動を熱くさせた。
もう…逃げない。そう決めた。

ウッドハウスの中では優香と美保が楽しそうにしていた。
「…で、流星群って?」
晴彦が二人に聞く。
「テレビで言ってた!」
「今晩はペルセウス流星群なんだって!」
テレビを指差し言う。
そこに映っていたのはペルセウス流星群の特集だった。

今晩から明日の未明にかけてがピークらしい。

「そうか、今日は8月12日か。」
健三が納得したように言う。
「だから?」
俺と晴彦には納得の理由が分からなかった。
「ニュース見てないの?」
「うん。」
息を合わせたように答えた。
「呆れた。以前から話題になっててね。今年は特にたくさん降るらしいぜ。」
と得意気に話た。
さすが、健三さん。

話を詳しく聞けば、流星群は今晩遅くに見られるらしい。
偶然にもここは都心からも離れた山の中。
街灯りなどない。
空気は澄んでいる。
つまり、天体観測には絶好である。