国道を進む。
特にまだ混む気配はない。
このままスムーズに進んで欲しいものだ。

「ねぇ、知ってた?」
「何が?」
「晴彦、フラれたらしいよ。」
「あーそうらしいな。」
その話なら散々昨日聞いた。

ある講義で会う人に告白してフラれたらしい。
「晴彦、かっこいいのにね。」
「そうか?」
「たって、頭は良いし…何でもできるじゃん。」
「まぁーそれは事実だな。」
「フラれたなんて、不思議。」
と、笑いながら言う。
…本当はどこかでバカにしてる感じだ。

「…でも、告白するだけましだよね!」
俺の方を向きながら言う。
何か言いたげな様子だ。
「なんだよ?」
「守からそういう類いの話聞かないなー。」
確かに、優香にそういう類いの話をしたことがない。
しかし、それにはそれなりに理由がある。

「まっ、守は晴彦と違ってバカだしどんくさいから…無理か。」
勝手に話を進め、馬鹿にする。
今に始まったことではないので、俺も気にすることはない。

「でもさ、守ってちゃんと見ててくれるよね。」
突然、照れくさそうに話。
「大学受験の時も励ましてくれたし…ほら、去年の冬。私が高熱出しときも看病してくれたじゃん。」
「そうだったか?」
よくも覚えているものだ、と感心する。
しかし、心では嬉しかった。

「でも、守のお粥は不味かった!」
「うっせー!」
やっぱり…嬉しくない。


そうこうしている間にも着々と目的地へ進んでいる。
「空いててよかったね。」
「だな。」
道が空いていることが奇跡だ。
いつものこの時期なら渋滞は必然的。
「まっ、日頃の行いが良いからだろ?」
「違う!日頃外で使わない運を使ってるだけでしょ!」
もし、そうだとしたら…今の俺は最強に好運状態だと思う。


アスファルトの町並みがだんだんと緑へと変わる。
どうやら、もうすぐのような気がする。
そう言えば、このバーベキューの言い出しっぺは優香だ。
大抵、優香が提案したイベントには事件やらアクシデントが起こる。
いまさらながら、嫌な予感もしてきた。

「どうしたの?」
不穏な感じを感じたのか、優香が俺に尋ねた。
「いや、何でも。」
嫌な予感がする!なんて、口が裂けても言えない。
「ふーん。」
疑いの目をしながらも追うことはなかった。

バーベキューという感じがより一層強い景色になってきた。
カーウィンドウを開ければ、夏とは思えない心地よい風が吹き込んだ。