「……きゃはあぁぁ…」

その悲鳴は彼女のあげた声。

興奮と、驚きと、呆然と…
何とも中途半端な、
静かな感嘆の声だった。


「…マヌケな声を」

里の入口から中心地にかけての光景に、
彼女は瞬きを繰り返していた。


入口からすぐ、白いレンガ造りの広場。
その噴水の台座には青い硝子のランプが並ぶ。

頭上に張り巡らされた綱には、
橙色のランプが幾つも点々とある。

それらは風たちに揺れて、僕らを照らした。


広場から続く三本の大通りには、
人を誘導するかのように、間隔をあけて道の脇に黄色いランプが存在している。


家々には一軒一軒、玄関先に様々な色や形をしたランプがまるで競い合うようにある。

紫、橙、赤、水色…

主張し合うものの、お互いに邪魔はし合わない優しい光。


「お祭りですか?」
「いやいや普段通りだよ」

もう腹が空いて敵わない。
里の観光は明日にして、一直線に自宅へ向かう決意を固めていた。


真ん中の大通りの先。

家々の屋根の上には、
巨大な建造物が見える。

建物自体が何色にも光り輝く。
他の家に比べれば一目瞭然、特別な建物だという事が分かる。

それが、僕の家。
祖父が代々受け継いでいる里の教会だ。

とは言っても、
住居にしている家は教会の隣に構えているのだが、こういう場合はまず教会から案内する方が良いのだろう。