花畑に惚けて止まりがちだった彼女が、別の目標に向けて足早になる。

…よしよし。

こちらに来てから、見る物全てに歓声を上げる彼女。

その同じ様な反応に、僕は正直少し飽きてしまっていたし、僕の腹の虫がグウグウと鳴き出していた。

森に入った当初の彼女の様に「お腹がすいた」と騒ぐ事はしなかったが、それは「大人で先生」という立場をわきまえてだ。



「さぁ、里に急ぎましょうか。僕の故郷はガラス工芸が盛んで、ランプが綺麗ですよ」

そう言って、僕は手に持っていた赤いランプを彼女の目線に上げた。


「あっ!!昔、お祖父ちゃんが『旅行のお土産だ』って言って、綺麗な気泡の入った水色のランプをくれた事があるんです!!場所は教えてくれなかったんですけど、旅行ってここの事だったんですねっ!?」

「…かもね?」

僕の曖昧な返事に、彼女は不服そうな表情を作ったが、僕はそれ以上は言わない。


『白黒つけたい』

彼女はそんなタイプの人間だろうが、僕は割と物事を曖昧にしてしまう。

『グレイを楽しむ』

それで良いじゃないか、
そう思ってしまう性分だ。