世界の3分の1にもなる面積がある「迷いの森」だが、
僕が先程言っていた、
『距離で言えば、遠い。
時間で言えば、すぐ…』
その意味を、
彼女は聞いてきた。
森の中は、
じいさんの力に満ちている。
時空間をねじ曲げる事が出来る彼は、森のどこかに人間が迷い込んだとしても、すぐに自分の場所へと導く。
そして、見定める。
通すべき存在か、
帰すべき存在か…。
彼の承認無しには、
この迷いの森を越えられない。
本来は遠い、
この場所と僕の里への距離も、「彼」で繋がっている。
次に、風たちの事。
じいさんは勿論、動けない。
しっかりと大地に根を張っているからね。
森に人間が迷い込んだ。
それを彼に伝えるのが「風たち」だ。
何処からともなく吹く彼らにも意思があり、森を統べる主に情報を伝える役割を持っている。
彼らの声は、
精霊にしか伝わらない。
力ある妖精にだって、
なかなか伝わらないだろう。
しかし、僕の母さんを除いて。
「…ここまでの解説は、こんな感じかな?あとは…?」
彼女は聞いた事を熱心にノートに書き綴っていて、じいさんは愉快そうに葉を揺らしていた。