「あぁ、そうなんだ。課外授業を頼まれた…。彼女は僕が面倒を見るから、通してくれない?じいさん…」

『――…いいじゃろう』

彼の言葉が届く度、
葉が揺れ、枝が揺れ、
紺色の空に緑色の光が舞う。


「…急に帰ってくる事が決まったから、母さんたちには言ってないんだ。伝えてくれない?腹ペコなんだ…」

『――はは…。大丈夫、もう風たちが飛んでいった。夕飯はちゃんと3人分追加されて準備が進んどるようじゃよ…』

「…流石だね」

僕たちの会話に大人しく耳を傾けていたユリさんだったが、瞳をキョロキョロさせて、ソワソワと僕に訴えかける。

質問したくて堪らない。
そんな表情だ。


「……課外授業だからね。質問をどうぞ?」

パァっと表情を輝かせた彼女から出た質問は、沢山だ。

その1つ1つに、
僕や、時折おじいさんが答えた。


まずは、樹の精霊の事。

長い時を過ごした木々は、人と言葉を交わせるまでになり「精霊」と呼ばれる。

その木々の中でも大樹である森の主、じいさんは偉大な精霊だろう。

太古の昔から根を張り、
人間世界と妖精世界を分け隔てる「迷いの森の番人」の役割を持っている。