彼女への返答を、
僕はわざわざ遠回しにした。


「君のお祖父さんの手紙に書いてある『セイちゃんに宜しく』は、僕の祖父。昔、同じ大学で教鞭をとっていたらしい。」

「そうなんですか…」


「でもね、祖父は妖精なんだ」

「……ぇ?」

僕の祖父は昔、こちら側に来て自分の本当の姿を隠し、教鞭をとりながら「人間」を学んでいた。
学園長はその時の同僚。

まさか自分の祖父が妖精と友人だなんて、思いもしなかっただろう。


しかし、更には…
目の前に居る僕の存在に、
彼女は驚く事になる。


「…僕の父は人間で、皆と何ら変わらないけれど、僕の母は妖精で。…僕はね、人間と妖精のハーフなんだよね。」

「――…えっ!?」


「……皆には、秘密だよ?」

僕はそう言って、
しぃ…と、口元に指を立てた。


僕に少しばかり人と違う能力があるのは、それが理由だった。


昔ほどではないけれど、
互いの種族に干渉し合わないようにして、この世界は成り立っている。


「だからね、この課外授業は、本当に特別だよ?」

「………はい」


彼女のノートは真っ白なまま。

僕は意地悪かな。
クリッとした猫目を大きく開いて、
必死に納得しようとする彼女を見て、
クスリと笑った。