僕は用務員ではないし、
機械をいじるスキルもなければ、勿論これを直す事だって不可能な訳だ。

しかし、
「見る」ことは出来た。
「知る」ことが出来た。

機械に手を当て、
静かにそっと瞳を閉じる。

内部の構造が、僕の脳裏に浮かび上がってくるけれど、専門的な事が解る訳ではない。

機械が、建物が、
僕に伝えてくれるのだ。

教えてくれるのだ。

僕は動物たちの言葉を理解出来る訳だけれど、同じ原理だと思う。

「物」にも、声が在る。


「……あぁ、この機械。ガスの供給装置?これ自体に致命的な故障が2つあって…、やっぱり機械自体の取り換えみたい。あと…」

「…あと!?…まだ何か!?」

「…ガスの配管を進むと、劣化してる箇所が5つ。放っておくと、ガス漏れが危険だから今回一緒に修理だね。」

「…どこ!?」

ジンくんが横から熱心に質問していて、それに答えるように、機械が一生懸命に僕に伝えてくるのが分かる。


「…カフェの厨房と、1号科学室、南館3階の階段辺りと、外のガス灯が中央広場の噴水の左と、東門の外から3個目…」

ジンくんは地面にランプを置くと、灯りのある地べたで手元を照らしながら懸命にメモを取っていた。