だからこそ、
僕はコンが暴言をはいても、安心して無視しているのだが、小生意気な態度だけは伝わっていると思う。

僕をコンとセットで雇ってくれたのも学園長。
少し風変わりした呑気な人だ。

僕とコンの関係性も、
学園長と用務員の彼だけは知っていた。


「…で?どうなの。ミハル先生には見て貰ったの?」

学園長は僕たちを見上げた。
ランプを足下に置き、両手で嫌がるコンの首元をワチャワチャ撫で回していた。


「これからです」

「……ぇ。これを、僕が見るの?ジンくんの仕事でしょ…」

ジン、
それが用務員である僕の茶のみ友達の名前だ。

ちなみに「茶のみ友達」の輪に、かなりの頻度で土産の菓子持参で学園長も交じる。


「…いいじゃない。業者が来る前にチョチョイと見てやんなよぉ、ミハルくん~。」

「……学園長」

はぁ、と溜め息を漏らした。
一歩ずつ機械の方へと近付きながら、僕はブツブツ文句を漏らしていた。


「…僕は用務員として雇われた気はないんですけど。世界史Yの講師じゃないんですかね?」

「ケチだね。いいじゃない、減るもんじゃないしさ」

「……減るんですよ」