広場の内部には、ガス灯が幾つも灯り、過ごしやすいよう明るく保たれている。

しかし一歩外へ出ると、
道端のガス灯の数はまばらになり、明度は落ちるのだ。


「…コン、僕たちも少し急ごうか。次の講義の準備をしなくちゃ」

『あぁー、わかったぁ』

足下に瞳を落とす。
薄暗い背景の中で、一層に黒い体のコンの瞳だけが、時折ガス灯のオレンジ色に揺れていた。


紺色の空には、
大小幾つかの惑星が輝く。

それら星の配置に気を取られながら、大学までの短い道のりを過ごしていた。


『…先生?』

そう声を掛けられて、
辺りを見回すが姿はない。


『…こっち、こっち』

「――あぁ」

コンじゃない。
声の主は、馴染みの猫だ。

コンとの相性が悪いようで、いつも物陰に隠れて僕に声を掛ける。
今日は雑貨屋の脇に立つガス灯の柱の陰に居た。


『…そこに何か落ちてるだろ。さっき駆けてった女の子が落としていった。』

「……おや」

道の真ん中にポツンとあるのは、何かが詰まった小さな布袋。


『あんたんとこの生徒じゃないか?届けておやりよ…』

「有り難う、多分…先程お会いした生徒の物だね…」