「あーぁ、服が砂で汚れちゃったよ」



その人は立ってぱんぱんと服の汚れを掃っていた。

私は座ったまま、ずっとその様子を見ていた。



そんな視線に気がついたのかゆっくりと私に近づいてくる。

さっきの彼の表情を思い出し、思わずビクッとした。



「なにビビッてるの?早く立ちなよ」



私の前にそっと綺麗な手が差し出される。

思わずドキッとしてしまった。



「ありが、とう……」



その手を取り、立ち上がろうとした。

そう思って膝を伸ばしたとき、彼が思いっきり私の腕を引っ張ってきた。




そのままバランスを崩し、彼にもたれかかる体勢になってしまった。



視界が暗くなる。

さっきまであった可愛らしい顔がぜんぜん見えない。



唇から感じる謎の感触。

ほんのりと暖かい。