「なに?」


「……いや、昨日の事……」


そう言われてピンと来た。

茉莉さんの事だ。

「……茉莉さんの事?」

茉莉さんという名前を聞いた瞬間に、分かりやすいくらいに真っ赤になる聡史。
口を押さえながら、必死に表情を出さない様に隠している。


何その反応。


「聡史、分かりやすすぎ」


はぁ〜と一つため息を吐くと、ケータイを開きスケジュールを確認した。


「…しょうがないだろ」


そう言いながら視線をそらし、切なそうな顔をする聡史。
そんな顔されたら、放っとけないじゃん。


「大丈夫だよ」


「マジ?サンキュー!!」


そう言いながら肩を組んでくる。


ーーードキッ


何この感覚!!

昨日から、説明がつかない胸を締め付けられる感覚に戸惑う。
こういう事して、女子が何とも感じないと思ってるのかな。


「これがチャラく見られるんだよ」


そう言いながら、肩におかれた手を邪険に払う。


「良いじゃん、柚子なんだから」


ニヤニヤしながら、再び肩に乗せられる手。
言うのも嫌になって、無言のまま教室まで戻った。