席はド真ん中。

もう、覚悟を決めなきゃだよね。

聡史は、ニヤニヤしながら私を見てるし……。

もちろん、悔しいから平気な顔をしてる風を装ってるけどさ。

やっぱり、私だけ出ちゃおうかな……。

トイレ行くふりして、戻らないとか!!


柚子、ナイスアイディア!!


「ちょっと、トイレ……」

「さっき行ったじゃん」

あのー、かぶせ気味に言うのやめてもらえますか。

悲しくなります。

逃げ道を断たれ、しかなく座ってると映画が始まった。


予告からビクビクしちゃう。

本編が始まって1分で、ギブだった。

極度のホラー嫌いな私は、ほら特有の映像とか撮り方から…何もかもダメ!!

でも我慢してたんだよ。

イスからずり落ちそうになるまで下に居たけど。


でもね、出たの!!


幽霊が。


やつが出た瞬間、心臓が止まりそうになって、思わず聡史の腕をつかんでいた。

たぶん、それが誰の腕でもしがみついてたと思う。

そこからは、ずっと目をつぶってしがみついていた。

でも、音がなるたびにビクッてなっちゃう。


苦痛な時間。


早く終われって、何度も何度も念じてたもん。


「…ずこ?柚子?大丈夫?終わったよ」


えっ?


恐る恐る顔を上げると、周りは明るくなって、みんなが帰り始めていた。


「終わった?」


「うん」


その言葉を聞いて、ホッとしたのか涙があふれ出してきた。

そんなに人前でなく方じゃないけど、あまりにも怖かったんだもん。