やえの手を引きながら、走り続けてどれだけ時間がたっただろう。

息も上がり、胸が締め付けられる。背中がぐっしょりと、汗で濡れ、服が張り付いていた。体力に、限界が来ていた。

すると、自分の進行方向に、少しずつだが、防空壕が見えてきた。よかった、これで助かる―ほっとしたのもつかの間、俺は足がもつれて盛大にこけた。

咄嗟にやえの手を離し、二人でこけるのを防ぐ。受け身をとることもできず、俺は地面に倒れこんだ。

「おにぃ!!!!!!」

やえが俺の傍に駆け寄る。起き上がろうとすると、鈍い痛みが足に走った。どうやら足を捻ったらしい。周りは相変わらず燃え続けている。このままでは、二人とも死んでしまうだろう。

どうか、やえだけでも…!!!!!!

「やえ!!!!!!お前は防空壕に入れ‼にいちゃんもすぐに行く‼」

俺はやえにそう告げた。しかし、やえは目に一杯涙をため、首を横に振った。