あたりに重く、低い音が響いた。それと同時に、爆風が巻き起こった。

俺はやえの手をつかむと、一目散に走り出した。防空壕のある西へ西へと、一目散に走り続ける。

がらがら、めらめら、大きな音をたてて道沿いの家が焼け落ちる。肉や鉄が燃える臭いが、鼻孔を突き抜けた。

真っ赤に焼けた鉄が、走っている人の体にぶつかって鈍い音をたてる。人の悲鳴やうめき声が、耳にべったりと張り付いた。

「おにぃ!!!!!!怖いよ!!!!!!おにぃ!!!!!!」

やえが走りながら、俺に向かって叫ぶ。やえの声すらかき消す騒音のなか、俺は無我夢中で走り続けた。

辺りは真っ赤に焼け、炎に包まれた人が断末魔をあげ、逃げまとう人が幾多の叫びをあげながら走り続ける。

そんな地獄のような状態のなか、俺はやえと共に走り続けた。生きるために、やえを、小さな愛しい妹を守るために―