悪魔は目を白くし、安久李さんに恐れをなしたかのようにその場から煙のように消え失せた。


私は目を丸くしてその様子を見ていた。悪魔が恐れた…?

人間に対して恐れると言う感情を持たない、本能だけで動いている悪魔が何故だ…


私はゆっくりと安久李さんに近づく。四肢のしびれは完全にとれてはいなかったが一応動けるぐらいにはなっていた。


「あ、凛童ちゃん。大丈夫?」


安久李さんが私に近づく。


「…なんであなたがいるんですか?」


私は安久李さんを睨みながら言う。安久李さんは苦笑しながら私の頬に触れた。


私は思いっきり安久李さんの手を叩く。


「触らないでください」


私は自分の頬に触れる。するとそこにつるつると自分の頬にはない感触があった。―絆創膏が貼ってあったのだ。


「頬、切れてたよ。女の子なら顔は大切にしないと」


安久李さんが微笑んだ。私が茫然としていると、安久李さんの手が私の後頭部を抑えた。