こうちゃんの左手が私の右手に触れた。

ぎゅっと手を握られた瞬間



……なぜか涙が溢れてきた。



「ユイの手はあったかいな。」


こうちゃんが、小さく呟いた。


私は溢れ出る涙を止めることができず、
ただ何度も何度も頷いた。


もう忘れていたはずなのに。


この5年間、
一度も思い出さなかったかと言えば嘘になるけど、
私はこうちゃんのいない5年間をしっかりと自分の足で立って生きてきたはずなのに。


こうちゃんとは違う人と出会って、

恋をして、
結婚をして、
子供を生んで、
平凡でも幸せな日々を築いてきたはずなのに。


こうちゃんに手を握られただけで、
胸がぎゅっと締め付けられた。


この感情は一体何だろう。



5年前。
サヨナラを言えずに終わった恋が、
また始まろうとしていた。