「亞蓮…」



雷さんが静かな声で話しかけてきた。



「はい。なんでしょう」




「亞蓮って…。亞蓮は…」



雷さんはそれから黙ってしまった。





「雷…さん?」




俺は運転しながら雷さんにもう一度話しかけてみた。





「…………」


雷さんは黙ったままだ。




俺は車を止め、雷さんの身体を揺すった。





「雷さん?雷さん?」



「………………」






暗くて見えなかったがどうやら雷さんは寝てしまったようだ。








静かな寝息を立てて寝ている。





その顔はまるで遊び疲れた子供の寝顔だった。



俺は思った。本当は優しくて素直な雷さん。


なのに何が雷さんをこんな風な仕事をやるような人間にしてしまったのだろうと。