「分かった」

水琴さんの隣にしゃがんで、花音の頭を撫でる。

「花音のやりたいようにすればいいよ」

「えっ、でも、予選は僕たち一緒の時間だから、傍にはいてあげられないよ?」

拓斗はオロオロしているけれど。

「じゃあ、私がお母様やお兄さんたちの代わりに、花音ちゃんと一緒に行ってあげるからね」

水琴さんは微笑みながらそう言った。

「ほんとう……?」

「だから安心して、自分の思う演奏をしましょう」

「……はいっ」

小さいながらもはっきりとした返事。

それでも拓斗なんかはまだ心配そうな顔をしているけれど。

僕たちは3人揃ってコンクールに出場することになった。