えっ、と拓斗が、水琴さんが、そして僕が、驚いて花音を見る。

「でもお母様からは、出なくても良いと言われているけど……?」

水琴さんは花音の傍に歩み寄り、膝を折って視線を合わせる。

「だって……あのね……」

周りにいる人たちの顔をちらちらと見る花音は、ぎゅっとスカートを握り締めて顔を上げた。

「あのね、負けたくないの……」

きゅっと口を引き結び、僕たちを見る花音の瞳は、頼りなさそうに揺れていた。

それでも……逸らすことなく、見ている。

「花音? 無理しなくていいんだよ?」

拓斗は心配そうにそう声をかける。でも花音は静かに首を横に振った。

「がんばりたいの……」

皆に見られて責められている気分にでもなっているのか、弱々しい口調だ。

それでもやはり、顔は上げたまま。


──そうか。

そうだよね。

自分で立ち向かわないと、意味がないんだよね。