足元に視線を落とし、落ち込んだ様子の拓斗。

「……確かにそうだったかもしれないね。でも……ふふ」

あのときの拓斗の激昂した顔を思い出したら、おかしくなってきた。

「拓斗があんなに怒れる子だったとは、知らなかったな」

元気はいいけれど、普段穏やかな性格であるはずの拓斗が、「やり返してやる」と。「花音をこんなに泣かせるやつなんか、許さない」と。

それはもう物凄い暴れっぷりで。

女性ばかりのメイドたちでは手がつけられず、力自慢の庭師まで呼ばれてきたのだから。

「だって、花音があんな酷い目に遭わされたんだよ!? ……頭にきた」

「そうだね」

「……でも、ごめんなさい……」

俯いている拓斗の頭が、ちょこんと下がる。

僕はその頭に、ぽん、と手を乗せた。

「花音は、拓斗がそんなに怒ってくれて、嬉しかったと思うよ」

「……そうかな」

「ああ」

「……でも僕、何もしてあげられなくて……」

じわり、と拓斗の目に涙が浮かぶ。