ずっとずっと昔、幼い頃。

僕たちは、普通の家庭と比べると特殊な環境──というのは大きくなってからの認識だけど──に育っていた。

ツアーで忙しく、滅多に家に帰ってこない父のことは、『ときどき遊びに来るおじさん』という認識だった。

『おとうさん』というものが何なのか、たぶん、解っていなかった。

その分、母は家にいてくれた。幼い頃は随分甘えん坊だったという記憶が、うっすらと残っている。

でもそのうち、母もときどきいなくなるようになって。

僕たちは3人でいることが多くなっていった。


まだ小さかった僕たちは、置いていかれることが寂しかった。

でもなんとなく、我慢しないといけないのだと感じて、いつも3人で家で待っていた。

かくれんぼやままごと、鬼ごっこ、秘密基地作り。

ときどき、『先生』にピアノを教えてもらったり、歌を教えてもらったり。

そうやって楽しくやれていたはずだった。