玄関先で大きなバスタオルに包まれた花音は、口を横一文字にぎゅっと引き結んで、俯き加減に立っていた。

けれど駆けつけてきた僕と拓斗を見て、感情の箍が外れたのだろう。

見る間に顔を歪めて、唇を震わせた。

「……おにぃちゃ……拓ちゃ……たすけてぇぇ……」

今にも消え入りそうな掠れた声で、初めて僕たちに助けを求めた妹。

ぼろぼろと下へ零れ落ちていく涙を見て、僕も拓斗も呆然とした。


──どさりと落ちたバッグからは、バラバラに切り裂かれた楽譜が飛び出してきた。ケースに入っていたヴァイオリンは、弦が切られていた。




こんな状態になるまで耐えていたのか、と。

こんな状態になるまで気づいてやれなかったのか、と。


僕は泣き続ける花音を、強く抱きしめた。