そうして一条隆明はどんな反応をしたかというと。
ただの浮気ならまだしも、『瀕死の婚約者を放ったらしにして自分は恋人と遊び呆けていた』などと世間に広まったら、間違いなく一条グループからは破門だ。
一条ではトップに立てないからと袂を分かつ決断をしたくせに、いざ縁を切られるとなると、それは怖いらしい。
一条の総帥に睨まれたら政財界では生き残れないとさえ言われているから、そこは致し方ないと言えるだろうけれど。
……なんとも情けない。
その情けない男は、心中も辞さないという勢いで迫る斎賀夫人の勢いに負けた。もちろん、斎賀社長は妻や娘のために余計な口は出さなかっただろう。
しかし瀕死の状態の婚約者を捨てることは、一条隆明の今後の人生にも関わる。
そこで『斎賀水琴』という人物は亡くなったことにして、彼は世間から同情を買うように仕向けた。
一度は縁を持った斎賀の援助もすると約束をし──そうしなければ夫人の怒りが収まりそうになかった──そして水琴さんは一条隆明の病院で密かに治療を受けていた。
そうして水琴さんは家からも、偽りの結婚からも逃れ、自由になった。
ただの浮気ならまだしも、『瀕死の婚約者を放ったらしにして自分は恋人と遊び呆けていた』などと世間に広まったら、間違いなく一条グループからは破門だ。
一条ではトップに立てないからと袂を分かつ決断をしたくせに、いざ縁を切られるとなると、それは怖いらしい。
一条の総帥に睨まれたら政財界では生き残れないとさえ言われているから、そこは致し方ないと言えるだろうけれど。
……なんとも情けない。
その情けない男は、心中も辞さないという勢いで迫る斎賀夫人の勢いに負けた。もちろん、斎賀社長は妻や娘のために余計な口は出さなかっただろう。
しかし瀕死の状態の婚約者を捨てることは、一条隆明の今後の人生にも関わる。
そこで『斎賀水琴』という人物は亡くなったことにして、彼は世間から同情を買うように仕向けた。
一度は縁を持った斎賀の援助もすると約束をし──そうしなければ夫人の怒りが収まりそうになかった──そして水琴さんは一条隆明の病院で密かに治療を受けていた。
そうして水琴さんは家からも、偽りの結婚からも逃れ、自由になった。


