「こ、こらっ、響也!」

救急車に連絡を入れて戻ってきたマスターが響也を叱る。

だが響也にはマスターの声は届かなかったらしい。

「心配くらいかけとけよ! 責任くらい感じさせろよ! それが親の義務ってもんだろーがよ!」

僕の胸倉を掴み、猛烈な勢いで捲くし立てる。

「そんなのお前が気にすることじゃねぇよ! 今お前が一番心配しなきゃなんねぇのは、テメェのことだよ!!」

空から降ってくる冷たい雨が響也を濡らし、金色の髪から頬へ、雫が伝い落ちていく。

「こんなんなってまで人のこと心配してんな。そんなんだからお前……いつまでも駄目になんだろ。もうやめろって……なんでもないフリしてるお前見て、なんでもないフリするこっちの身にもなれよ」

雨粒の流れる響也の頬に、目から零れた雫も混じった。

「センセー死んでからずっと辛かっただろ……。もういいって。お前のせいじゃねぇんだよ、分かってんだろっ……」

張られた頬が、じんじんと痛みを増していく。